9月
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【第1回】不確かさの考察(1) 概論

まず、すべての測定には、何らかの“不確かさ”を伴う、ということを述べなければいけません。

不確かさ、とは何か。これは弊社サイトの「測定を学ぶ」という項目にもあるので、ここでは割愛しますが、簡単に言ってしまうと、ガウシャン分布で求められる「真値」に対して、実際に測定すると、値がばらついてくる、ということになります。

では、そのばらつきはどのようにして、どのような要因で起こるのでしょうか。

本来、測定をする側からすれば、真値が求められることが最もいいということはご理解いただけることと思います。しかし、実際にはそうはいかないわけですが、その要因と対策がわかれば、真値に近づけることができるかもしれません。

今回は、不確かさの要因のうち、システムにおける要因について述べていきます。


【1】システムにおける不確かさの要因

伝送法システム図

複素誘電率・透磁率測定には、2つのシステムがあります。

  • 伝送法
  • 共振法

の2つです。

このシステムそのものにおいても、不確かさを生み出す多くの要因が潜んでいます。

システムというものはそもそも、ネットワークアナライザーなどの測定器、ポートから治具へつながるケーブル、治具、試料全体が関わってひとつのものとして成り立っています。いわば、そのすべてのセクションにおいて、不確かさの要因が潜んでいる、と言うことになります。

今回は第1回ということで、いくつかの例を挙げておきたいと思います。詳細については、今後の連載で述べていきます。

例えば、伝送法による複素誘電率・透磁率測定システムの同軸線路の場合では、ネットワークアナライザーの線路特性インピーダンスをいかに正しく測定(絶対測定)できているかで、全体の測定精度が決まってきます。

共振法システム図

 

また、共振法においては、ネットワークアナライザーによる共振器のQ値測定の精度によって、全体の測定精度が決まってきます。このために、ネットワークアナライザの校正がとりわけ重要になってきます。

また、両システムに共通することとしては、測定するための信号源(C/N:Carrier to Noise Ratio)*注3 そのものにも不確かさの原因があり、信号が通る回路(Active・Passive Circuit)も、何らかの原因で、必ず不確かさを引き起こす要因をもっています。

このように、システム全体において、不確かさを引き起こす要因は様々にあります。それらをまず理解し、そして考察することによって、測定精度を上げることにつなげていくことができるわけです。

次回は、システム構成から考えられる不確かさの要因について考えていきたいと思います。

ありがとうございました。


参考文献

  • 不確かさ入門ガイド((ASG104-04)平成19年8月16日 独立行政法人製品評価技術基盤機構認定センター)
  • 不確かさの見積もりに関するガイド JCG211S31【高周波インピーダンス(ベクトルネットワークアナライザ(VNA)の評価に関する指針】制定:平成22年6月1日 独立行政法人製品評価技術基盤機構認定センター
  • 宮川 『高Q値測定の雑音による影響』

連載の今後の予定

  • 【第2回】システム構成から考えられる不確かさの要因
  • 【第3回】ネットワークアナライザーによる誤差(不確かさ)の要因
  • 【第4回】伝送法による誤差(不確かさ)の要因
  • 【第5回】共振法による誤差(不確かさ)の要因

9月
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はじめに

ご覧くださいましてありがとうございます。

株式会社関東電子応用開発 代表取締役の田原です。

弊社は1982年に創業して以来、マイクロ波・ミリ波帯システムコンポーネントの設計製作から、電子材料の複素誘電率測定装置の開発、製作、販売をずっと行って来ました。また、誘電率測定の受託測定も数多くお受けしてきました。

測定というものは、ただ単に測定器やパソコンのボタンをポンと押せば正しい値が出てくるわけではありません。むしろ、それではほとんどの場合、正しい値は出てこないと言っても過言ではないでしょう。

試料の特性は様々であり、それに合わせて、治具、加工、測定器の校正、測定器につなぐケーブルの精度など、数多くのセットアップをしなければなりま せん。そうしたことを抜きにしては、正確な値を得ることは難しいのが現実です。それ故に、測定する側としては、その都度、様々な角度から、いろいろな工夫 をしていくことになります。

毎年、11月から12月に、横浜においてMicrowave展(Microwave Workshops and Exhibion)が開催され、数多くのマイクロ波に関わる企業が出展しますが、弊社は毎年、会場において企業セミナーを開いています。

そこで訴えているのが、いかに正確な値に近づけていくか、という課題についてです。
昨年は、測定における「不確かさ」について焦点を当ててお伝えしました。

このWebセミナーでは、そのMWEセミナーでお伝えしていることを中心にしながら、測定に携わる方々にぜひ読んでいただきたいことを盛り込んでいます。一読いただければ幸いです。

どうぞよろしくお願いします。